たなさと

バンドを語りたい、ただそれだけ。CDレビューやライブレポなどもするので一応ネタバレ注意

音楽を愛している限りHakubiの顔とか見えなくていい

リクルートによる、音楽を通して若者を応援する企画「FYHM」こと「Follow Your Heart & Music」。

起用されたメンツがなかなかアツい。KANA-BOONがトップを張ってるのがめちゃくちゃ嬉しいし、マカロニえんぴつは本当に各所で引っ張りだこの無双っぷりが目に見える。PELICAN FANCLUBの大抜擢感も嬉しいし、みゆなもここ最近で急激に観るようになった印象。

でもその中で、残る1組のバンドが色んな意味で俺は気になる。

Hakubiというバンド。名前は聞いたことがあった。曲名も目にしたことがある。でも聴いたことはなかった。

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このアー写も見たことあったけど、特に何も思わなかった。「真ん中の奴の顔見えねぇし」ぐらい。そこを掘り下げることはなかった。

でもFYHMのサイトに載ってるアー写を見た時に印象は一変。

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一瞬で察した。「あ、これ意図して顔見せてないタイプのやつや」と。

フロントマンだけが顔を隠してる。新しい。そういう感じやったんや、このバンド。

ライブでしか顔出ししないバンドと言うと、サイダーガールとか初期のパスピエandropとかが浮かぶ。ルックスに頼れないから、音楽そのもので差別化を図らないといけない。音楽そのものに突出した武器が要る。まぁ、音楽って本来そういうもんなんやけど。

じゃあ、 Hakubiってどんなバンドなんやろう。というわけで、 FYHMで興味を持ったこの機会にしっかり聴いてみた。

 

再生回数の一番多い曲がこれ。

演奏はめちゃくちゃシンプル。言い方は悪いが別に音にもメロディにも全然個性ない。この曲だけを聴く限り、このバンドの強みは完全に歌詞なんだろうなと思った。MVも完全に歌詞をフィーチャーしてるし。あと声も良いな。少し少年的で、でも力強い。この声と熱量で歌う若者の共感を得る歌詞がウリ、って感じか。

ただこの曲に関しては、サビ最後の『夏休みの宿題のようで』に全てを賭けすぎな気がした。楽曲の構成もメロディも歌詞も、最後のそれをフックにしたいがためだけの要素になってしまっているというか。『夏休みの宿題のようで』って言いたいだけみたいな。

一番最初に出たMVみたいやし、人気曲というよりは単純に公開されてから長いから再生回数が伸びてるだけなのかな。まぁそれでもこの規模のバンドで250万回超えはすごいけど。

 

でも、その後のMVを観てみるとどんどんアイデンティティが洗練されてきているのが分かった。今回この企画でMVが発表される前までの最新曲がこれ。

あぁもう今時。とても今時。一発で覚えるタイトル。聴いたことなかったけど曲名は一発で覚えてた。

"午前4時、SNS"。令和って感じだ。午前4時はSNS上で「死にたい」という旨の書き込みが最も多い時間帯らしい。そうなんか。俺が朝起きてツイッターの寝てる間のTL遡ったら午前4時台なんかしゅうまいしかおらんぞ。

そして実際聴いてみたら一発で耳に残った。弾き語りから入って加速していく構成も、サビで張り上げる声も、その後の全力の語りも、全てが見せ場。そして相変わらず歌詞を引き立てるMV。『僕の音楽の神様はメジャーデビューで何かをなくした』とか言っちゃう青さも、この手の曲ならアリかな。

やはりボーカルだけ顔が見えない。いやベースとドラムもまともに顔映ってないけど。本当に、歌詞を全面に押し出して演ってるんやなーって感じ。言葉で勝負しようという意志が見られる。

 

今回FYHM第一弾として公開されたMV曲もボーカルは顔を出していない。最後に目だけ映るけど。

これもなかなか歌詞が光ってる。若者を応援する企画で "大人になって気づいたこと" をつらつら並べていく生々しさ。でもそこに押し付けがましさやわざとらしさがない。

『嫌いな人にこびを売らないといけなくなった事』
『分からないことまで頷かなきゃいけないこと』
『誰も満たされないままに今日を終えていくってこと』
『それでも明日をまた生きること』

これ、どれも別に "大人になって気づいたこと" と言って間違いではないけど、「大人にならないと分からないこと」ではないと思う。高校生でも大学生でもそういう風に思う時はある。でもだからこそ、「大人になったらこうなるんですよ」「社会に出たらこんなことばっかりなんですよ」とただ身も蓋もないことを言うような歌詞になっていなくて絶妙やなーと思う。これが「学生時代の専攻なんて役に立たないこと」とか「勤務地の希望は大体通らないこと」とか「仲の良い同期がどんどん異動していって嫌いな奴ばっかり残っていくこと」とか言ってたらただの社畜の歌になる。

『この先迷うことばかりだ 見渡す限りに光は見えない 自分らしい自分って何だ 正しい選択ってなんだ いつか分かる日が来るのだろうか』

若者へ向けた歌として最適な言葉だなと思う。無責任に明るい言葉をかけるのでもないし、無闇に不安を煽るのでもない。上手い。

好みじゃない人たちは「中高生が好きそう」と一蹴するのだろうけど、そういうバンドこそこの手の企画には合ってるのかも知れんね。

 

この記事を書くにあたって公式サイトも見たんやけど、なかなか各イベント出演を総なめにしている。サーキットイベントから大型フェスまで。2020年、さらに来そう。一回ライブ観てみたいな。この手の歌なら弾き語りでも迫力ありそう。

演奏で盛り上げることもないし、イメージやけど多分ライブでもMCでヘラヘラ雑談することもないんだろうな。ボーカルの子どんな顔してんのか知らんけど、純粋に曲だけを聴いてエモくなれる。歌モノってこういうバンドを言うのだと思う。メジャーデビューしても何かをなくさないでね。

聴かず嫌いしてたわけでもなくただただ手を出す機会がなかったけど、FYHMをきっかけに知れてよかったです。良い企画やなこれ。

Hakubi、注目してみます。

 

では(=゚ω゚)ノ