たなさと

バンドを語りたい、ただそれだけ。CDレビューやライブレポなどもするので一応ネタバレ注意

辞める選択と続ける選択

空想委員会が解散を発表した。

ボーカルの三浦さんが大腸癌により亡くなったからである。非常に単純明快で純粋に悲しい理由だ。ベースの岡田さんもギターの佐々木さんも「三浦さんのいない空想委員会は空想委員会ではない」と述べている。仰る通りというのが正直なところである。

空想委員会のライブは一度だけ観たことがある。活動休止前最後のツアーの広島公演。自分がバンドにハマり始めた当初から聴いていたバンドの一つだったから、一度活動休止する前に最初で最後に観られてよかったなと思った。

その後、活動再開のアナウンスを聞いた時はもちろん嬉しかったし、ここからまた精力的に活動していくのだろうと思っていたので、今回の訃報と解散の知らせはあまりにも無念である。

空想委員会の解散の選択を聞いて、同様の決断をしたバンドが浮かんだ。赤い公園である。津野米咲が亡くなり、言ってしまえばサポートギターを入れればライブは可能ではあったが、解散という道を選んだ。ボーカルが脱退しても新しいボーカルを迎え、変わらない勢いで活動を続けていたが、最終的にこの終わり方となってしまった。自分は赤い公園に至ってはなんだかんだで一度も観られないままで、それについて触れている記事を当時に執筆している。

バンドは生き物だとよく言われる。勿論誰が欠けてもダメなんだけど、その中でもボーカルやメインコンポーザーはどうしてもバンドの軸になりがちである。そこに穴が空くとやはり続けることは難しくなるのかなと。

一方で、残されたメンバーが作曲とボーカルを引き継いで続ける選択をするバンドもいる。代表的なのはフジファブリックヒトリエだろう。志村正彦もwowakaも急な別れだったから、メンバーをはじめとする残された関係者は自分たちの今後を重く重く考えたと思う。

結果として、それぞれギターを担当していた山内総一郎やシノダがボーカルを受け継いで活動を続けることとなった。遺された楽曲を歌っていくだけでなく、新しい曲も生み出していった。自分は、ヒトリエはwowaka時代から好きで、そしてシノダに替わった今でも変わらず聴いている。フジファブリックは、自分が知った時には既に今の体制になっていたが、志村正彦の遺した名曲の数々は勿論聴いている。し、大阪城ホールのワンマンをソールドアウトさせたり、YOASOBIのikuraやフレデリックとのコラボが話題になったりと、今でも勢いは衰えるところを知らない。

そんなバンドもいる。

そうなると、リスナーでしかない我々に出来るのは、辞める選択と続ける選択のどちらも尊重していくことしかないと思うという話なのである。必ずしも受け入れる必要は無いが、その決断を尊重はしないといけないと思う。

空想委員会に新しい委員長を迎えて活動を続けてほしかったというのも一つの意見としてあって良い。赤い公園にサポートギターを入れて津野米咲の遺した楽曲を演り続けてほしかったと言うのも自由だ。ボーカルが替わったらもう違うバンドだと線を引いてフジファブリックヒトリエを聴くのを辞めるというのも全く咎められることではない。ただ、空想委員会や赤い公園は解散を選び、フジファブリックヒトリエ継続を選んだ。そこに対して敬意は表されるべきだと思う。

何なら、ボーカルやメインコンポーザーに絞って書いてきたが、勿論それに限った話ではないしな。記憶に新しいところだとsumikaがそう。sumikaの多くの楽曲を手掛けているのは片岡さんで、亡くなった黒田さんはボーカルでこそないが、それでも彼の抜けた穴は大きすぎる。あのギターを高く構える独特なスタイルも人柄も唯一無二だった。あとそもそもいくつかの作曲を担当していたし。しかし、sumikaは3人で続けることを選んだ。何なら逆に、死別でなくメンバーの脱退だけでも休止の決断をするバンドも枚挙に暇が無い。

詰まるところ、どちらに転ぶとしても決断するのは本人たちであって、我々が何を言っても仕方ないのである。なら、せめてその選択がその人たちにとって最善だったんだと、その事実を認めることが必要なのかなと。理解や受容はできなくてもいいから。

人間の集まりだもの。いつか終わりは来る。それが想定外に早く突然訪れることも避けようが無いのであれば、本当に今この瞬間活動していることを尊んで推していきたいと思いますね。

別に誰かの発言とかを見て何か思うところがあったりしたわけじゃないです。何となくふと。

では。