たなさと

バンドを語りたい、ただそれだけ。CDレビューやライブレポなどもするので一応ネタバレ注意

CDTVヒゲダンフェスにこれからの音楽番組の可能性を見た

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今年度始まったばかりの「CDTVライブ!ライブ!」。その企画で、「ヒゲダンフェス」と称してOfficial髭男dismが1時間ぶっ通しで演奏するというアホみたいなコーナーが実現した。

自分は髭男に対してはニワカである。名前こそ初期から知っていたが、関ジャムで紹介されるのを観て興味を持ち、"ノーダウト" でブレイクしてから曲を聴き始めた分かりやすいニワカである。

今回のヒゲダンフェスはそんなニワカの自分でも食い入るようにテレビを観てしまうぐらい素晴らしかった。マジで金払わずに観ていいもんじゃなかった。

自分は今回このヒゲダンフェスを観て、改めてOfficial髭男dismというバンドのヤバさを思い知ると共に、CDTVという音楽番組に感謝と今後の期待を抱いた。

 

 

ヒゲダンフェスの開演は、20時台に登場と言い続けて最後の最後までCMで引っ張った。ぶっちゃけこんだけ実質21時前まで始まらないなら裏のエンタの神様最後まで観られた。

一曲目は新しいEPから "HELLO" で始まった。CM前の打ち合わせの映像で「まだ演れてない新曲は演りたい」「一発目は挨拶せなあかんから」と言ってたから、 "HELLO" 始まりは予想してたけど、やっぱりカッコよかったな。

あとこの「せなあかんから」にグッときた笑 島根の人も「あかん」て使うんかな?別に関西弁だけだとは思ってないけども。

新譜の中ではこの曲が一番好きかな。全体を通してくどくない絶妙なラインでの押韻。カッコいいけど聴いてて耳障りが良い。前にMステで聴いたのが初だったけどあの時はフルじゃなかったし。

 

その後 "パラボラ" と2曲続けて新曲を投下したかと思えば、その次は過去のアルバムから "115万キロのフィルム"。この曲が人気なのは本当にすごいと思う。MVもない、当初からタイアップがあったわけでもない、ただのアルバム曲。これもMステで演ってたけど、ストーリー性のある歌詞だからというのもあって、やっぱりフルで聴くに限るな。

 

"FIRE GROUND" は藤原さんがタイトルコールした時に「おぉっ」と声出してしまった。

有名どころしか知らない状態で買って聴いた「Traveler」の中で、初見で一番気に入ったのがこの曲なんです。

髭男はまだライブを観たことがない。フェス尺ですら。だから「地上波初披露のライブ定番曲」と言われて何が来るのか予想出来なかったんだが、その分 "FIRE GROUND" の選曲には驚かされた。

この曲でもう完全に「歌番組じゃなくてライブだ」と思った。火柱が上がる演出とか、大サビ前の尺伸ばしたギターソロのアレンジとか、圧巻だった。『天才?秀才?20年にたった1人の逸材?』の言い方とかめちゃくちゃ熱量込められてたし、サポートメンバーの方々の掛け声にも熱さが伝染しているのが伝わってきた。

 

CMを挟んでいきなり新曲 "Laughter" を厳かに歌ったと思えば、続いて聴いたことのないイントロ。でも画面下部には「Stand By You」のテロップ。

なるほど、これもライブアレンジか、と。タイトル字幕出すのもうちょっと待つべきだったな、何の曲か先に分かってしまったのはちょっとネタバレ感があった← まぁこれは番組側の裁量だけど。あの入りはライブでも演ってるんだろうか?音源通りのイントロに入ったタイミングで「Stand By You」て出てたらもっと鳥肌やばかったと思う。

ていうかCメロの『たとえ僕ら遠く離れた場所へ行こうとも』のところ高すぎん?なんで生放送で地声で出し切れんの?

後ろに過去のライブ映像が映ったのもよかった。スクリーンまでしっかり活用している。

 

ギターがアップで映ったことで予想がついた "Pretender" は、歌に安定感が増してる気がした。紅白とかMステの時は高音が苦しそうな印象があって、「やっぱりめちゃくちゃ高いんやな」とか「流石に緊張してるんかな」とか思ってたけど、今回はそれがなかった。マジで文字通り口から音源。

というか何なら音源超越してた。大サビの『甘いや いやいや』のところメロディ変えたの鳥肌だったわ。

あと藤原さんが歌いながら咄嗟に顔の汗を拭う瞬間があってめちゃくちゃカッコよかった。本当に番組に出演してるんじゃなくてライブをしてる時のアーティストのそれだった。

 

最後の "I LOVE..." は楢ちゃんがシンセ構えて分かった。シンセベース弾くのって現状この曲だけ?

"Pretender" をしっとり終えた後サポートメンバーの方々がまた後ろに出てきて演奏始めたの、もう画面全体にオーラがすごかった。銀テープまで飛ばしちゃってもうスターでしたね。

生放送1時間の長尺を渡されるだけある、貫禄のあるライブだった。

 

今回のセトリ、"ノーダウト" "宿命" "イエスタデイ" がなかったのがすごい。新曲を多く携えているとはいえ、MV1億再生を目の前に捉えつつある代表曲達を軒並み差し置ける度胸。一方で出世作の "Pretender" はしっかり終盤に据えつつ "FIRE GROUND" のようなコア曲も投下する試験的挑戦的姿勢。

新曲のプロモーション、定番曲の普及、テレビ初演奏曲の選曲、全てにおいてバランスの取れた完璧なセトリだった。コアなファンからライトなリスナーまで、Official髭男dismに対する認知が様々な層をまとめて掻っ攫えるパフォーマンスだったと思う。

番組の最後で、

藤原「これクリスマスとかもあるんですかね…?」
スタッフ「次は2時間あげます」
藤原「…楽曲作っときまーすw」

みたいな会話をするシーンがあった。まぁ本当に2時間演ることは流石にないだろうが、マジで演っても演り切ってしまいそう、マジで曲作って2時間分セトリ組んでしまいそうと思ってしまう。今の髭男ならやらかしてくれやがりそうだ。冗談抜きで無敵だわ。

 

 

さて、ヒゲダンフェスを観終えて、思うことは恐らく他の視聴者と同じ。

色んなアーティストにやってほしい。

こんなこと今までなかった。4時間ある番組の中の一部とはいえ、地上波で単独のアーティストがトークもVTRも無く1時間ぶっ通しで演奏するなんてこと今までなかった。1時間あれば、ワンマンとは言わないまでもツーマン尺ぐらいは余裕で演奏できる。名刺代わりの代表曲からライト層には知られざる人気曲まで網羅できる。まさに今回の髭男のように。

今回の髭男でも、藤原さんが「短い時間ではありますが…いや、短くないな!」と言い直す場面があった。もちろん本当に「1時間じゃ短い、2時間寄越せ」なんて思ってるわけがない。深い意味はなく口を突いて出たんだろう。それだけ、テレビで長尺で演奏するという感覚がまだないんだろう。普通はそう。

それでも今回、髭男が数あるアーティストの中でその感覚をいち早く掴んだのは大きい意味があると思う。この企画を恒例にするとまでは行かなくても、これから色んなアーティストがテレビで長い時間・多い曲数をパフォーマンスするという機会がどんどん増えてくれたらいいなと思う。何なら30分でもいい。フェス尺と思えば十分すぎる持ち時間だ。

コロナが無ければ生まれなかった企画だろうが、コロナが終わっても続いてほしい企画だ。今回のヒゲダンフェスがそのきっかけになっていくことを願う。

 

では(=゚ω゚)ノ