たなさと

バンドを語りたい、ただそれだけ。CDレビューやライブレポなどもするので一応ネタバレ注意

SPACE SHOWER TVのPower Pushで振り返る、4つ打ちブームを中心に考えた2010年代邦ロック

12月に絶対やろうと思ってたやつやります。こんな年末じゃなくて12月頭ぐらいには上げたかったけど時間なかった。

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SPACE SHOWER TV、通称スペシャの月間ヘビーローテーション、Power Push。

このコーナーで取り上げるアーティストは本当にその時々のシーンを席巻する面子が多くてですね。さすがスペシャのスタッフの皆さんは見る目がすごいんやろうなと。で、この選出アーティストを振り返れば、まんま邦ロックシーンをまとめることができるのではないかと思い、記事にしてみることにしました。

2010年から2019年までの10年間、毎月1組。すなわち計120組。これらのアーティストとその選出楽曲を見て、2010年代の邦ロックの流行がどのように変遷したのか見てみたいと思います。

2012〜2017年の6年間に学生生活を送り、バンドにハマった自分としては、2010年代のロックって完全に4つ打ちバンドがフェスを蹂躙してたイメージなんですよね。だから今回は、10年間を2年ずつ5つに分けて、4つ打ちブームの発展と衰退までを追ってみました。

 

…まぁ大袈裟な前フリしてるけど、単に選出メンツを振り返るだけです。「あぁ、この時期にこのバンドが選ばれてたんやな〜」程度の。

では2010年から早速。

 

 

①2010〜2011年:4つ打ち前

2010年

1月 CITY LIGHTS / andymori
2月 ハマナスの花 / Galileo Galilei
3月 ロックンロールは鳴り止まないっ / 神聖かまってちゃん
4月 幻の命 / 世界の終わり
5月 タカラモノ〜この声がなくなるまで〜 / ナオト・インティライミ
6月 キャラメルフレーバー / SISTER JET
7月 city / [Champagne]
8月 今夜はMAGIC BOX / MAGIC PARTY
9月 カロン / ねごと
10月 Mary Lou / 毛皮のマリーズ
11月 笑って笑って / OKAMOTO'S
12月 Love at First Sight / Fear, and Loathing in Las Vegas

2011年

1月 人との距離のはかりかた / plenty
2月 MirrorDance / androp
3月 HIDE & SEEK / NIKIIE
4月 少年であれ / 高橋優
5月 あたし、今日、失恋しました。 / 沢井美空
6月 観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは / The Mirraz
7月 半径30cmの中を知らない / アルカラ
8月 PONPONPON / きゃり〜ぱみゅぱみゅ
9月 デスコ / 女王蜂
10月 思い出せなくなるその日まで / back number
11月 セントエルモ/ Appricat Spectra
12月 Sonic Fireworks / avengers in sci-fi

 

まずandymori始まりってのがもうエモい2010年代初年。他にもGalileo Galilei、ねごと、毛皮のマリーズ、plentyといった、売れるだけ売れて解散していったバンドが散見される。一方でセカオワ、シャンペ時代のドロス、ベガス、高橋優、back numberなど、2010年代をかけてトップに登りつめてるアーティストも。OKAMOTO'S、androp、ミイラズ、アルカラ、女王蜂辺りも息長いよなぁ。

当たり前っちゃ当たり前やけど、時代を感じるラインナップですね。

高橋優さん実は一番好きなアーティストなんですけど今思えばなんで "少年であれ" やったんやろな…いやメジャー初アルバム「リアルタイムシンガーソングライター」リリースのタイミングやったからこの曲になったんやろうけどギター持ってる曲で選出されてほしかった感ある笑 ほらどうせこの時期なら "福笑い" とかさ。

あときゃりーは当時マジでなんだこいつって思った覚えがある。これが売れると見抜いて選出できるのすげぇよスペシャスタッフ。2010年代頭ってちょうどPerfumeがドーム公演や紅白出場を当たり前にやり出した時期やから、「中田ヤスタカやったら間違いないやろ」みたいな認識でもあったのかな。

個人的にApplicat Spectraは活動が続いてれば結構売れてたと思うんやけどな。知らん間に解散してたけど。王道のロックサウンドと近未来的な電子音の織り交ぜ方は当時新しかった。そこに乗せたハイトーンハスキーボイス。数年後のフェスブームにうまく乗っかってればもっといけてたと思う。

あと全く悪意はない、他意はないんですけどナオトインティライミでめちゃくちゃ笑う。

 

 

②2012〜2013年:4つ打ち黎明期

2012年

1月 バイマイサイド / Hemenway
2月 サブリナ / 家入レオ
3月 The Girl On A Board feat. H.TEFRON / SALU
4月 オレンジ / クリープハイプ
5月 Amy / SiM
6月 円盤飛来 / Hello Sleepwalkers
7月 第三惑星交響曲 / 石崎ひゅーい
8月 集合体 / おおたえみり
9月 渚にて幻 / indigo la End
10月 透明感 / 禁断の多数決
11月 ダーリン / 渋沢葉
12月 おもてなし / tricot

2013年

1月 masquerade / HaKU
2月 モンスターのかくれんぼ / Rihwa
3月 ドライアイス / ハルカトミユキ
4月 The Revelation / coldrain
5月 未来へのスパイラル / グッドモーニングアメリカ
6月 S.S. / パスピエ
7月 今更 / 赤い公園
8月 夏の夜 / 片平里菜
9月 盛者必衰の理、お断り / KANA-BOON
10月 ネバーランド / Czecho No Republic
11月 Don't Stop The Music feat. 森高千里 / tofubeats
12月 キラーボール / ゲスの極み乙女。

 

はいここ重要です。KANA-BOONとグドモが出てきました。ハイハット裏打ちが覇権握り始めた時期です。ここの2年間、今でも第一線にいるアーティストが少ないイメージ。今でもピークが過ぎてないのはクリープハイプとSiMぐらいかな。フェスというものが一般層に浸透していき始める過程で、ロックバンドがリスナーに提供する音楽の在り方が変わっていった時期やったのかなと。

"盛者必衰の理、お断り" を初めて聴いた時の衝撃は忘れられんなぁ。"ないものねだり" でええやん気になるなと思ってたKANA-BOONに一発でハマった。弟と一緒にスペシャ観てて「やばい!!これはやばい!!」て騒いだのを覚えてる。

他に、赤い公園はこの時にはまさかボーカルが変わる事になるとも、それによってむしろ再着火するとも予想だにせんかったなぁ。俺も何だかんだCD買ったことなかったのに新譜買ったしなぁ。ライブ行きてー。

あとゲスってインディゴの名前が界隈で大概浸透しきってから出てきた印象やったんけど、Power Push選出期は意外と一年ちょいしか変わらないんですね。

それからパスピエ。3年前のメトロックで初めて観た(そしてどハマりするキッカケになった)時に「まともに知ってるの "S.S." ぐらいやな…」と思ってたんですよね。"とおりゃんせ" "チャイナタウン" "MATATABI STEP" "トキノワ" という代表曲まみれのセトリやったのにどれも「曲名は聞いたことあるけど…」レベルやったんですよね。そんな中でまともに分かる曲が "S.S." だったってのは自分がいかにスペシャを観てたかってところに繋がるかと。

自分としてはこの頃から、Power Pushそのものに注目するようになったな。「今月は誰だろう」「多分あのバンドだな」とか意識しながら観るようになっていきました。

 

 

③2014〜2015年:4つ打ち全盛期

2014年

1月 Everything is Alone / FOLKS
2月 TOWER / SAKANAMON
3月 パラレル / KEYTALK
4月 アイネクライネ / 米津玄師
5月 君が誰かの彼女になりくさっても / 天才バンド
6月 ビビった / キュウソネコカミ
7月 起死回生STORY / THE ORAL CIGARETTES
8月 Magic / HAPPY
9月 オドループ / フレデリック
10月 21g / 古川本舗
11月 マジック / go!go!vanillas
12月 緑閃光 / LAMP IN TERREN

2015年

1月 もっと光を / BLUE ENCOUNT
2月 褒めろよ / GLIM SPANKY
3月 さよならの季節 / SHISHAMO
4月 Terminal / 04 Limited Sazabyz
5月 心理の森 / シンリズム
6月 Summer Soul / cero
7月 START / Mrs. GREEN APPLE
8月 TRACE / WANIMA
9月 アウトサイダー / Awesome City Club
10月 ShibuyaK / DAOKO
11月 ラー / 水曜日のカンパネラ
12月 sub/objective / ぼくのりりっくのぼうよみ

 

今フェスで1,2番目のステージを盛り上げてるバンドはほとんどここにいる。4つ打ち全盛期というかフェス全盛期やな。KEYTALK、キュウソ、オーラル、フレデリック、バニラズ、ブルエン、SHISHAMO、フォーリミ、ミセス、WANIMA。名前並べるだけで錚々たるメンツ。特に「ONAKAMA」3組のメジャーデビューとWANIMAの登場で一気にロックフェスが市民権得た感じある。

この位置には来れなかったけど、SAKANAMONとテレンにも永く頑張ってほしいと思う。

そしてひっそりと頭角を現し始める米津玄師。

この時期のPower Pushはメジャーデビューするタイミングのバンドが片っ端から選出されてたイメージ。大体のバンドが今年来年ぐらいに軒並み「メジャーデビュー5周年」を掲げて色々やってたorやると思われる。

個人的に覚えてるのは2014年9月。実はフレデリックと同時にブルエンもメジャーデビューしてたんですよね。その作品から "Memento" がこの月のPower Pushかなぁと思ってたんやけど実際は "オドループ" で。当時はフレデリックに持っていかれたか〜と思ったけど、ご存知の通り結果として "オドループ" は2010年半ばで最大級のヒットとなるわけで。ほんまにスペシャのセンスってどうなってんねんと思うよね。

やっぱり個人的には自分の嗜好のルーツってこの時代にあるなぁと思ってしまうな。みんなカッコいいもん。楽しいんだもん。

 

 

④2016〜2017年:4つ打ちからシティポップへ

2016年

1月 STAY TUNE / Suchmos
2月 MONSTER WORLD / HOWL BE QUIET
3月 Crazy Dancer / 夜の本気ダンス
4月 Native Dancer / D.A.N.
5月 戦争を知らない大人たち / My Hair is Bad
6月 明るい未来 / never young beach
7月 You / 雨のパレード
8月 いつかの自分 / anderlust
9月 COCOA / Rei
10月 A Short Film / LILI LIMIT
11月  あつまれ!パーティーピーポー / ヤバイTシャツ屋さん
12月 フラレガイガール / さユり

2017年

1月 Freedom / SHE'S
2月 Salve feat. JJJ / KID FRESINO
3月 Dear Fate, / Ivy to Fraudulent Game
4月 さよならプリズナー / yonige
5月 World is Mine / Yogee New Waves
6月 Life Saver / ReN
7月 River / Age Factory
8月 始まりの歌 / 緑黄色社会
9月 君はロックを聴かない / あいみょん
10月 N.E.O. / CHAI
11月 赫色-akairo- / CIVILIAN
12月 In Your Pocket / Nulbarich

 

えらいもんですよね。2年でここまで変わるのかと。あんだけ縦ノリお祭り騒ぎソングばっかりよしとされてたのに一気にオシャレ系シティポップが台頭。③で挙がってたバンドがフェスの最大ステージを占領するようになった裏で、この時期に "STAY TUNE" をカッコいいと思わせたSuchmosはマジでバケモンやったなと思う。2010年代後半の一番のターニングポイントになったバンドやわ。

他にもD.A.N.、ネバヤン、雨パレ、ヨギー、ナルバリッチと、あと1年早かったらフェスキッズは絶対寄りつかなかったであろう層がどんどん売れ始めた。LILI LIMITも一緒にもっといくと思ったんやけどな…

あと、あいみょんが選ばれた時は「ほぉ、このタイミングなんや」と思った覚えがある。"君はロックを聴かない" 、既にメジャー3枚目のシングルやったし。でも今思えばメジャー1stアルバムが出るタイミングやったんやな。そしてこの曲と "愛を伝えたいだとか" が関ジャムで紹介され、この後彼女は急激に売れていきました。

しかしまぁ時の流れは速いなぁと思うよなぁ。ヤバTのメジャーデビューもう3年前か…

あとyonigeは絶対選ばれるの遅すぎたと思ってます。

 

 

⑤2018〜2019年:4つ打ちバンド絶滅

2018年

1月 フカンショウ / パノラマパナマタウン
2月 That's My Baby / RIRI
3月 Echo / PAELLAS
4月 Selfish / 小袋成彬
5月 真昼の月 / Saucy Dog
6月 Memory / DATS
7月 Flash!! / King Gnu
8月 東京 / MONO NO AWARE
9月 溶けた銃口 / teto
10月 悲しみもいつかは / Halo at 四畳半
11月 Pure / 向井太一
12月 悲しみのそばに / Hump Back

2019年

1月 パレイドリア / 須田景凪
2月 僕らまだアンダーグラウンド / Eve
3月  Feel the Moon / Kvi Baba
4月 ノーベル / mol-74
5月 Pool / SIRUP
6月 のめりこめ、震えろ。 / Tempalay
7月 イエス / ズーカラデル
8月 Balloon / chelmico
9月 ヤングアダルト / マカロニえんぴつ
10月 VARIETY / TENDRE
11月 SPOTLIGHT / eill
12月 ナイトタイマー / SIX LOUNGE

 

もう踊れる・ノれるロックバンドの時代が終焉を迎えてる事が非常に分かる2年間。ここまで露骨に変わるのかと。2019年なんか初手ボカロ出身の須田景凪と歌い手出身のEveから始まってる時点でバンド音楽自体の終わりと言われても仕方ない。

ソロシンガーも、向井太一やSIRUPみたいなミナホBIGCATレベルの実力者を絡めつつ、Kvi Baba、TENDRE、eillなど、バンドファン的には「誰?」てなるレベルの人まで出てき始めた。もうスペシャの「この手のアーティスト、推していきますよ」感がすごいもん。まさにパワープッシュ。

バンドを見てみても、2019年完全優勝大正義バランスブレイカKing Gnuに始まり、MONO NO AWARE、mol-74、Tempalay、ズーカラデル、マカロニえんぴつと、4つ打ちダンスロックとは程遠い癖の強さを持ったメンツばかり。

正統派なギターロックはSaucy Dog、Hump Back、ハロぐらいか。サウシーはね、MASH A&R優勝アーティストのこれまでの型を完全に外した売れ方してる。オーラル、フレデリック、テレン、パノパナは全部、Power Push選出がA-sketchからのメジャーデビューのタイミングやったのに、サウシーだけインディーズの時点で選ばれてる。何ならその後特別メジャーデビュー宣言をすることなくいつのまにかA-sketchからリリースしてたし。バケモン。

そう言えば今度サウシーとマカロニえんぴつが東名阪のクアトロでツーマンツアーやるらしいですね。ゼップでやれ、ぼけ。

ただこの流れで、2010年代最後の選出アーティストがSIX LOUNGEってのはなんか嬉しいね。正直タイミングとしては遅すぎるぐらいで、とっくに売れてるし、あとごめんなさい俺全然詳しくないんですけど。ここに来てゴリゴリのロックバンドが締めくくってくれたのはデカい。まだまだロックバンドがいけるぞっていうスペシャの足掻きみたいなものを感じる。

この10年間を音楽に捧げた人間として、やっぱりいつまでも泥臭いロックバンドが生き残っていってほしいと思うんですよね。

 

 

以上です!

10年間、色んなアーティストが出てきた。ほんまに売れてるアーティストが軒並み選出されてきたことがわかる。逆に、ここで取り上げられる事で知名度が上がって売れていく人たちも。まぁヘビーローテーションってそういうもんか。

さて、2019年末というこのタイミングだからこそ聞きますけど。皆さん気づきました?Official髭男dismいなかったでしょ???

ここに名前が挙がってないけど今爆売れしてるアーティストってすごいんですよね。Power Pushに選出される間もなく、若しくはそれまでそこまで重要視されていなかったのに急激に、売れてしまったという事だから。髭男の他には、マンウィズ、ワンオク、sumikaポルカなど。

それでも髭男がずば抜けてすごいのは、もう一段階ライトなローテーションであるit!ですら取り上げられてないのに、今年の9月に月間最重要アーティストVIPに選ばれていること。アルバム出す度にVIPに選ばれてるワンオクやマンウィズですら、調べたらit!にはそれぞれ "Liar" と "Distance" で選出されていた。マジで髭男どんだけすごいんだよ。というかじゃあなんで今まで誰も知らなかったんだよ。

明日紅白ですね。楽しみですね。

 

終わるらしいですよ、2010年代。どんな音楽が流行ってきたのか、こんな視点から見てみるのも面白いですね。書いてて自分で楽しかった。

スペシャはこれからもチェックしていきたいと思います。2020年代はどんなアーティストがバズるのか。まずは1月のPower Pushが誰かに注目してみましょう。

僕はネクライトーキーじゃないかと予想してます。"夢みるドブネズミ" 公開されたばっかりやし。

 

2020年も色んな音楽に出会えますように!いっぱいライブ行けますように!

では(=゚ω゚)ノ